睡眠薬による睡眠と自然の睡眠は違うのですか
ワシントン大学の研究によると
睡眠薬を使用している人では、睡眠薬を使用したことがない人に比べて
自動車事故のリスクが2倍近くになることがわかった
睡眠薬を服用すれば、確かに簡単に眠りにつけるだろう。
しかし、睡眠薬による睡眠は決して自然な睡眠ではなく
「偽りの睡眠」ともいえる。
例えば、睡眠薬を使い眠った人と自然に眠りについた人を
見た目で判断することは難しいが、脳の活動を見ると一目瞭然だ。
脳の中では全く異なる現象が起きている。
一部の睡眠薬は脳全体に分布する「GABA受容体」という
細胞上のタンパクに結合し、 神経系の働きを抑制することで、
脳全体の活動を低下させ、眠気を誘発する。
自然な睡眠中の脳は、起きているときと同じくらい、
部位によってはむしろそれ以上、活発に活動しているのである。
睡眠中に脳が何をしているのかは「謎」であるが、
睡眠中の脳活動は、睡眠が生体にとって重要な生理機能である証拠だ。
睡眠薬による睡眠は、脳全体を一気にトーンダウンさせるため、
このような睡眠のはたらきそのものを弱めてしまう。
そのため、例えば記憶喪失、混乱、夢中歩行などといった
重大な副作用が見られることもある。
睡眠薬の潜在リスクは計り知れない?
ワシントン大学の研究グループは、
40万人分ものデータから睡眠薬の使用と交通事故との関連性を調べ、
睡眠薬を日ごろから使用している人は 、
交通事故のリスクが約2倍になるという結果を得た。
睡眠薬を服用したあとに運転するのはもちろん危険だが、
運転前でなくても定期的または日常的に睡眠薬を使う習慣がある人が
車を運転するのは、飲酒運転と同じようなリスクを抱えていることになるという。
この結果を踏まえて、医者や薬剤師、そして患者も含め、
当事者は睡眠薬の潜在的なリスクについて、
より議論を交わすべきであると研究者は指摘する
睡眠薬に頼らない不眠治療も存在する
睡眠薬には依存性が言われているものもあり、睡眠の質も低下させる。
睡眠薬の使用には注意が必要であり、決して習慣的に使うものではない。
したがって、眠れないとき、すぐに睡眠薬に頼るのではなく、
「認知行動療法」を試してみるのもよいかもしれない。
不眠の原因にはストレスが大きく関わっているが、
認知行動療法は、ストレスに上手に対応できる考え方を
つくっていくための治療法である。
精神科医など専門家との面談を通して、彼らの手助けのもと、
現在抱えている問題に自分で対処していけるようになることを目指す方法だ。
うつ病や不眠症、摂食障害など、多くの精神疾患の治療に取り入れられている
眠れないからといって、すぐに睡眠薬に頼る前に少し考え直してみてほしい。
規則正しい生活リズムと食生活、運動の習慣、眠りやすい就寝環境、
眠る前のカフェインやアルコールの摂取など、
睡眠に不適切な生活習慣を見直すことが第一だろう。