胸水
胸水のレントゲン写真
肺炎のときのレントゲン写真は
正常であれば、空気を含んで黒くみえますが、
肺炎になると白い状態に変わります
これは、本来、空気で満たされている肺(黒い部分)が
つぶれて、空気以外の他の成分に置きかわるためです
例えば、トリインフルエンザ肺炎や、サーズ肺炎などでみられる
重症肺炎では、肺に胸水と呼ばれる水がたまります
そして、胸水がたまると、レントゲンで白い影になります
肺胞と呼ばれる袋が水でうまってしまうと、
そこから酸素の取り込みができなくなります。
白い部分が広がる程、生命が危険
重症肺炎で、自力での呼吸では、酸素を取り込めない場合には
挿管と呼ばれる処置をします。
挿管治療とは人工呼吸器療法です
気管に管を入れて、人工呼吸器につなぎ
酸素を送り込む治療です
重症に陥った時、男女で回復に違いがあるという論文があります
心臓の病気、肺の病気を診療している医師からの論文報告ですが
著者は、女性は、胸にたまった水を、
男性より早く減らすことができることに気付いたと‥
胸にしみだした水(胸水)を消す能力は、
女性が、出産・妊娠中に水分調整することと関係するかもしれません
女性は、体内に水をためやすく、かつ、出しやすいようです
胸水が速やかに消えれば、それだけ病気の回復も早くなります。
女性の持つ不思議な技
心臓が悪い場合にも胸水がたまりますが、
これを心臓性の肺水腫と呼びます。
この場合は、尿を出す薬や心臓を強くする薬を用いて
胸水を減らします。
心臓性の胸水の方が、重症肺炎に原因する胸水より、
治療に反応しやすいようです
一方、重症肺炎による胸水は、元の肺炎治療も難しくて
なかなか水が引かないし予後は悪いといえます
胸水穿刺の方法
胸水穿刺はどのように行なうのでしょうか
胸水の採取は、胸壁の皮膚を通じて注射針を刺す方法で行われます
色や匂いなどの外観や、比重、タンパク量、LDH(乳酸脱水素酵素)
細胞数などの性状を調べます
局所麻酔をした後、肋骨の間から穿刺を行ないます。
穿刺針を入れる際、呼吸を止めます。身体を動かさないように固定し、
咳やくしゃみは我慢します。
検査時間は10~30分ほど
目的が検査だけなら胸水を100ccほど採取してすぐに終了
ですが胸水が大量に溜まっている場合は、
身体への負担を考えてゆっくり抜き取るために時間がかかります
胸水の採取後は穿刺場所をしばらく圧迫して胸水がもれるのをを防ぎ
30分~数時間、ベッドで安静にします
検査結果
胸膜炎や肺炎、肺がん、そのほかの悪性腫瘍などでは
血液が混じって混濁した滲出液が見られます
タンパク質の濃度は高く、また比重も高くなっています。
また、LDH(乳酸脱水素酵素)も高値を示します。
胸水には、臓器から剥がれ落ちた細胞も含まれているので、
肺がんなどが疑われる場合は、引き続いて細胞診などが行われます
一方、心不全や肝硬変、ネフローゼ症候群では
黄色っぽく透明な漏出液が見られ、
低タンパク、低比重となります。
また、LDH(乳酸脱水素酵素)も低値を示しています
合併症には 気胸,肺穿刺による喀血,
胸水を大量に急速に除去した後の再膨張性肺水腫
または低血圧,肋間血管の損傷による血胸,脾臓または
肝臓の穿刺,血管迷走神経性失神などがあります